有名ブランドは、その有名さゆえに、模倣や便乗の標的とされやすい。ブランド物のニセモノが税関で押収されたり、模倣品の販売業者が逮捕されたりといったニュースを見聞きしたことのある方は多いだろう。そうした摘発の拠り所となる主な権利が「商標権」だ。
しかし、ひと口に「模倣」「便乗」といってもその程度には差がある。精巧なコピー品と、「似てはいるが明らかに別物と分かるだろう」というべき後発品やパロディとでは、法的評価は異なる。また、ブランド側の主張が、一般的なデザイン要素や一般名称の過度な独占につながるものだった場合、これも認められにくい。
有名ブランドは、ブランド保護の意識が高過ぎて、しばしば、正当な権利行使の範囲を超えた「過剰権利主張」をすることがある。それが「言いがかり」というべきムチャなレベルに達していることも少なくない。これらを筆者は「エセ商標権」と呼んでいる。
数珠袋がルイ・ヴィトンの商標権を侵害?
ルイ・ヴィトンといえば、世界的にその地位を確立しているフランスのラグジュアリーブランドだ。日本にも愛好者の多いが、同社は日本人全体を敵に回しかねない失礼な言いがかりを、日本の中小企業にぶつけたことがある。
2020年、ルイ・ヴィトンは、東京・浅草にある仏壇・仏具を取り扱う滝田商店に対し、自社の商標権を侵害している旨の警告文を送りつけた。しかしルイ・ヴィトンと仏壇とは、あまりにもミスマッチな取り合わせである。いったい、何が商標権侵害だというのだろうか。
同社が問題視したのは、滝田商店で販売されていた「市松模様をあしらった数珠袋(念珠入れ)」であった。ルイ・ヴィトン曰く、これが同社のブランドラインのひとつである「ダミエ柄」の商標権侵害だというのだ。
ルイ・ヴィトンのダミエ柄のポーチ(図1)と、滝田商店が取り扱っている数珠袋(図2)のデザインを比較すると、確かに似ているとはいえる。
だがこれは、似て当たり前である。なぜならば、どちらも地模様のデザインがチェッカー柄、日本でいうところの市松模様である点が共通しているだけだからだ。

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