277: 2014/06/24(火) 22:51:06.48 ID:VMjiadaio
取り戻した日常はパパもママも居てなんの不自由ない。のに、味気ない。
で、考えてみたらそうかアイツがいないんだって気付いた。伊介のご機嫌取りが得意で、身の回りの世話をしてくれる人。なるほどねぇ、うん。家政婦的なのが欲しいわねぇ。

<ねぇママ、家政婦雇ってほしーなぁ。>

恵介「仕方のない娘だな。ふむ…近々探してきてやるよ」

<ちょっと待って。…アテがあるの。>

278: 2014/06/25(水) 01:58:05.79 ID:RV7sS+G3O


裏社会の情報屋から『寒河江春紀』の住所等の情報を受け取り、手紙を送った。犬飼家、もとい犬飼伊介の家政婦として働かないか?という勧誘。距離があるし住み込み、働くというからには勿論給与は与えるつもりで。アイツ以外に家政婦を勤められても意味がない気がした。
アイツの情報の中にあった『暗殺者』の3文字で思うところがあったらしく、ママは奇妙な事を聞いてくる。

恵介「家政婦ねぇ。黒組にいた子なんだろ?こんな回りくどい事して、本当は友達になりたいんじゃないのか?」

<なーにママったら。伊介はパパとママがいれば幸せなの。ただ楽に暮らしたいだーけ♪>

手紙を送ってからの数日は、やけにワクワクした。
のに、返ってきた返事を見て伊介は憤慨したわ。だってお 断 り だったんだもの。バカ丁寧に綴られた丸文字は、引き受けたいんだけど兄弟達に引き止められて泣く泣く…といった内容が記されていた。兄弟って、おい。伊介より兄弟が大事なんだ?ふーん、ふーん、生意気ぃ。

伊介がうさぎのぬいぐるみをナイフでメッタ刺しにしていたら(どうせ捨てる気だったもん♪)ママが「迎えに行くか」と提案してくれた。
え?ママがここまで伊介のわがまま聞いてくれるなんて珍しい!
お言葉に甘えて行くことにした。飛行機に搭乗、伊介とアイツの距離は遠かった。

着いた。古くっさい家。呼び鈴を鳴らして伊介の誘いを断るなんて生意気ぃって悪人面で、出てきた女の腕を引っ付かんだら、意外にも嬉しそうに伊介様!会いに来てくれたのか?ってアイツは笑った。
でも気が収まらなくて良いから来いって強引に引っ張ったら、ママに制止された。ここからは、強いつよーいママのターン。

お金の話。良い条件。アイツにとって優良な話を持ち出しつつ殺気は忘れない、それがプロの暗殺者のトーク術。
怯まないまでも観念はしたらしいアイツが、頭を掻きながら振り替えって心配そうにこっちを窺う兄弟達に言い放った。「新しい仕事先は遠いけど、姉ちゃん頑張ってくるから留守番よろしく」。
流石ママ!うふふ、これで楽な毎日が過ごせるわね♪

と思ったら次は兄弟達のターン。アイツのくびれにしがみついて泣き出した。もうどこにも行かないでー!みんなで一緒に暮らしたいよー!…うるさ……頃しちゃおうかな?
でもね伊介、すごくモヤモヤしたのよ。アイツも困った顔してる。そして極めつけ。まだ14、5歳くらいの女の子がトコトコ近付いてきて、「はーちゃんを連れて行っちゃうんですか…?」って。潤んだ瞳で。少しだけアイツ…春紀に似てるから余計に重かった。

はーちゃんって呼ばれてんのね。
もし伊介が、長期間ママとパパから引き離されたら?

<…ママ、やっぱりもういいわ。もう寒河江春紀はいらない>

恵介「別の家政婦にするのか?」

<ううん、家政婦はいい。意味ないもん…>

恵介「…伊介。今からでも遅くない。『友達になりたい』ってちゃんと気持ちを伝えなさい」

<や、やぁね何よぅいきなり>

恵介「俺はお前に暗い世界の事しか教えてこなかった。でもその実、普通の女の子としての青春も送ってほしいと思っていたよ。二十歳近いお前にやっとこんな事を教えるのも何だが、仲良くしたい子には素直にその気持ちを伝えなさい。ママは嬉しいんだ。犬飼伊介が誰かに執着するなんて今までなかったじゃないか。その気持ちがなんなのか、深く考えずに誤魔化すのか?」

ーーただ、楽しかったのよ。

弟を抱き締めてしゃがみ込んでる春紀の後ろに、立つ。

身体も心もむず痒い…。でもママから貰った苦しい程の情愛に背中を押されて、挫ける兆候は皆無よ。伊介はゆっくり、ゆっくり開口したわ。

伊介「ね、ねぇ。春紀…」
おわり

引用: 悪魔のリドル短編SS投下スレ