「失礼しますね」と下着の中に手を…マンガワン事件〈もう一人の被害女性〉が明かした悪質な手口「教師にSOSを発したのに…」

 小学館「マンガワン」に連載を持っていた漫画家・山本章一(50代)が、講師をしていた高校の元生徒の女性(以下「原告女性」)に対し苛烈な性加害に及んでいた、と認定した裁判が注目を集めている。山本は、マンガ『堕天作戦』(小学館)の作者として知られる。北海道芸術高校札幌サテライトキャンパス(以下「北芸」)では、本名で講師をしていた。

 実は、山本からの被害を訴えているのはこの原告女性だけではない。ジャーナリストの秋山千佳氏が、もう一人の被害女性である元生徒の堀彩花さん(仮名)の告発を受け、その悪質な性加害の手口について「文藝春秋PLUS」に寄稿した。(前後編の後編/前編から読む)

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決まって玄関付近で“鉢合わせ”

 最初に山本が接近してきたのは高校1年生の秋だった。校内行事の準備で下校が遅くなり、同級生の女子たちと学校を出ようとすると、決まって玄関付近で山本と鉢合わせた。暗いから車で送っていくという山本の申し出に皆で乗るようになり、時にはカフェレストランで食事をごちそうになることもあった。

 こうしたことが毎週のようにあったため、堀さんは今振り返れば女子生徒の下校を待ち構えていたのではないかと考えるようになったが、当時は山本が生徒相手でも敬語で話す距離感もあって「優しくて面白い先生だな」と捉えていた。

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 2年生になったある日、一人で下校しようとしていた堀さんは、玄関先で山本に呼び止められ、同級生たちといる時と同じ流れで送ってもらうことになり、車に乗り込んだ。「ファミレスで食事していきますか」と言われて店に寄り、食事を終えるとさりげない口調で切り出された。「美術館とか博物館に付き合ってくれる人が全然いなくて。こんな美術展が開かれているから、休みの日に一緒に観に行きませんか」

マンガワン問題に揺れる小学館 ©時事通信社

 美術が好きだった堀さんは、無邪気に喜んだ。山本が他の生徒たちと休日にカラオケに行った話などを聞くことがあり、警戒することはなかった。当時は父親が気難しく、母親がよく泣いていたのもあって、家にいたくない気持ちもあったという。

「先生と話していると楽しいし、恥ずかしい話ですが、森の中のメルヘンチックなお屋敷で先生とのんびり暮らせたらいいのに、なんて子どもじみた空想をしたこともあります。要するに現実的な恋ではまったくないのですが、その頃までは仲の良い先生とお出かけできるのが純粋に嬉しかったんです。でも、家にいたくない私の事情を、山本は性的に利用しようとしたのだと思います」

女性教師にSOSも

 山本と出かけた休日の帰り、夜道を走っていた車が、人気のない場所に入って停まった。シートベルトを外して無言で凝視してくる山本に、堀さんは怖くなり、うつむいて体をこわばらせた。山本は不機嫌になり「君ってやつは。私のことが好きじゃなかったのか」と責め立てた。好きだと言った覚えはなかったが反論できずにいると、ため息をついた山本は腕を伸ばしてきて言った。

「失礼しますね」

 スカートをめくられ、下着の中に手を入れられた堀さんは、逃げ場もなく混乱した頭で「これって私が悪いのかな」としか考えられず、されるがままになった。帰宅後、親には言えなかった。堀さんは「先生をかばいたくなる生徒の思いが悪用されたんですかね」と回想する。

 行為への嫌悪感はあったが、学校に行けば距離を置くことは難しく、堀さんはその後も声をかけられれば従った。

「後から山本に言われたのは『これは普通の行為で別に悪いことじゃないと君に繰り返し教えた』『男性に警戒心を持たないように誘導した』ということでした。だからなのか、最初の怖さもだんだん麻痺していって。体を触られるのは男女の関係であって、教師と生徒の関係じゃないということを当時ははっきり認識できなかった」

 18歳の誕生日を迎えた直後から、ホテルに連れていかれた。山本は「絵を描く資料にする」と言って裸の彼女を縄で緊縛し、写真に収めるなどした。

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 堀さんがトイレに行こうとするとその様子を見せろと迫ってきた。嫌がる堀さんが隙をついてトイレに駆け込んで鍵をかけると、激高した山本から「君は騙し討ちをしたな。私は騙し討ちをされるのが大嫌いだ」と執拗に責められ、以降はトイレへの同行を強制されるようになった。

 周囲の大人にSOSを発しなかったわけではない。3年生の頃、北芸の女性教師に「山本先生から誘われてラブホテルに行った。良くないことだと思うので先生から注意してほしい」と相談したことがあった。このことは後に相談を受けた教師自身が認めている。

 しかし、堀さんが「大事にはしたくないんですけど」と前置きしたからという理由で、女性教師は山本を個人的に注意するに留まったらしい。堀さんは、学校側のこの初動ミスも被害を拡大したと考えている。

山本章一の『堕天作戦』

「あの子は性的な好奇心が旺盛」

 ある時、山本が、SMのボンデージ衣装を「他の子に着せようと思ったけどちょっと大きかったから」と言って持ってきたことがあった。その“他の子”の名前こそ明言を避けたが、堀さんの脳裏には、1学年上の女子生徒が思い浮かんだ。山本が日頃から「あの子は性的な好奇心が旺盛でいつも私とそういう話をしている」と語っていた生徒だ。堀さんのクラスの授業が終わった直後に突然乱入し、山本に「卒業したら結婚しようね」と言って抱きつき、教室を静まり返らせたこともあった。

 また、堀さんの1学年下の女子生徒とも、山本は性的なメールのやりとりをしていたらしい。それを知った学校側から注意を受けたという話を堀さんは耳にしていたが、後年、別の教師から「あの二人も肉体関係があった」と聞かされた。

 つまり、1学年に1人は山本の性的対象となる女子生徒がいた可能性があると、堀さんは見ている。

前編から読む)

※この続きでは、北芸の不誠実な対応についても報じています。秋山千佳氏の記事「マンガワン事件 もう一人の被害女性の怒り」は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」で先行配信中。4月10日発売の月刊文藝春秋5月号にも掲載されます。

文藝春秋

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マンガワン事件 もう一人の被害女性の怒り
最初から記事を読む 「北芸高校にも責任がある」マンガワン事件 “もう一人の被害女性”が怒りの告発

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